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株式会社ヒューマンインタフェース代表取締役 小畑 貢 が使い手の世界についてのお話をお送りします。
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問題を見逃さないユーザビリティテスト 6 よい被験者、よくない被験者1

問題発見のためのユーザびりティテスト、どんな人がよい被験者で、どんな人がよくない被験者でしょうか? 実際にテストをやったとき「今の被験者はいい被験者だった」、「いまの被験者はよくなかった」と思ったのはどんな人でしたか? 
 真剣にタスクに取り組む人、よく発話する人、途中でタスクの内容を忘れてしまわない人、気軽に進行係に質問する人、進行係からの質問になかなか返事しない人、説明書や画面の説明をきちんと読まない人、タスクの内容を忘れる人、進行係の指示を聞いてくれない人、タスクにかなり手こずり悪戦苦闘しても、「どうでしたか?」と質問すると、「覚えたらわかりやすいです」と答える人、違和感があったりしたら遠慮なく不満を言ってくれる人、想定してなかったことに気づかせてくれる人、自分の意見でなく他の人はこう思うと言う人、慎重でなかなか操作を進めない人、被験者は実に様々です。

 実際にユーザビリティテストを行う担当者の立場で考えると、よい被験者、よくない被験者といえば上記のようなことが想像されます。しかし、製品のユーザビリティ上の問題を発見するという観点でいえば、問題を見つけてくれる被験者こそよい被験者であり、問題を見つけてくれない被験者はよくない被験者です。発売後、製品が多くのユーザーに使われたときに起こるであろう全てのつまずき、すべての問題を見つけてくれた被験者こそ最高の被験者です。だから私たちはユーザビリティテストの被験者を選ぶときは、問題を見つけてくれる人達を選び、問題を見つけてくれない人達は選びません。

被験者の組み合わせ
多くのユーザーがつまずく、全ての問題を、一人の被験者が見つけられるわけがありません。しかし、5~6人の被験者でも、よい組み合わせができれば、重要な問題はすべて、重要度の低い一般問題の大部分まで見つけることができます。
ひとりひとりの被験者選びも大切ですが、テストに参加してもらう被験者群(例えば6人)の被験者の組み合わせは、とても大切です。製品に内包されている全ての問題を見つけ出せる6人の被験者とは、どういう被験者達なのでしょうか?

 わかりやすい2つのケースで考えてみましょう。6人の被験者で試作品のユーザビリティテストをしました。
 ケース1では、3つの問題が見つかりました。6人の被験者からそれぞれ1個ずつ問題が見つかりました。問題Aは2人の被験者で起こりました。問題Bも問題Cも、2人の被験者で起こりました。
 ケース2では、6つの問題(問題A、問題B、問題C、問題D、問題E、問題F)が見つかりましたが、被験者はそれぞれ、1人が1個だけ問題を起こしました。

 さて、どちらのケースが好ましいでしょうか? 問題の数は少ないが、それぞれの問題を複数の人達が起こしたケース1の方が好ましいでしょうか?それとも、問題を多く見つけられたケース2の方が好ましいでしょうか。確かに、6人の被験者がそれぞれ異なる問題を起こしたケース2の場合、問題はどれも1人だけで起こっていますから、たまたま起きた問題であって大多数のユーザーには、当てはまらないのではないか、問題ではないかもしれない。そういうふうに考えることもできます。その点、ケース1の場合は、見つかった問題は3個ですが、どの問題も2人の被験者で発生しており、たまたま起きた問題ではなく、確かに製品に内包されている問題に違いないと思えます。

あなたは、いったい、どちらのケースが好ましいと思いますか?
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問題を見逃さないユーザビリティテスト
5 スキルの低い人達をどうやって見つけるか

選ぶ前に被験者を探す必要があります。探すのは3つくらいの方法があります。まず、社内のネットワークを利用して探す場合、規模の大きい会社ではユーザビリティテストの被験者として協力できる社員を予め登録してある会社があります。また、グループ会社として人材を提供する会社をお持ちのところもあります。そういった仕組みを利用して被験者を探します。
次の方法は、社内の仕組みに頼らず、ユーザビリティテストをしたいと希望している方たちが、アルバイト募集広告などを利用して自分達で直接探すやり方です。その次の方法は、被験者を探してくれる会社に依頼して探すやり方です。私の会社のヒューマンインタフェースも被験者を探すサービスを提供しています。

どの方法で被験者を探すにしても、スキルの低い人達を選ばなくてはなりません。では、どうするか。仮に最終的に6人の被験者を選ぶとしたら、その数倍、できれば20人くらいの候補者の中から選ぶことになります。「私は道具使いが苦手です」と言う人だけに応募をお願いすることも可能ですが、そううまくはいきません。スキルの低い人だけを募集しますと言っても、スキルの高い低いはひとりひとりによって判断は、まちまちです。当然、スキルの高い人も混じってしまいます。さらに、人々が被験者に選ばれたいと思ったら、自分のプロフィールを偽って応募する人がでてきます。募集する段階では選考基準は曖昧に示し、具体的に明確には示さないのが原則です。

では、スキルの低い人をどうやって探したらいいでしょうか、応募者(ユーザビリティテストに被験者として協力しますと申し出た人)のスキルレベルを判断するための質問と回答選択肢を用意しますが、いくつかの有効な質問があります。ひとつ目はパソコンのスキル質問です。二つ目はパソコンの用途質問。三つ目は機器やソフトウエアの使用体験質問、こういった質問が有効です。

パソコンのスキル質問
ひとつ目、パソコンのスキル質問です。簡単なものから難しいものまで具体的なパソコン操作をリストアップします。そして、初心者、初級者、中級者、上級者の各レベルに割り当てます。例えば次のように。
●パソコンの電源を入れたり終了したりできる。
●パソコン内に保管してある文書を印刷する。
●パソコンで写真の大きさ、位置を調整しながら写真と文章の混じった文書を作る。
●パソコンで作った文書を暗号化、圧縮、メールに添付して送る。
●パソコンで作った文書をいっさい変更できないようにする。
このような操作をどこまでできるかがわかると、その人のパソコン操作スキルを見当つける上で大変有効な判断材料になります。
二つ目はパソコンの用途体験です。メールだけ体験している人と、メールと名簿作成の両方を体験している人では、明らかにメールだけの人の方がスキルが低いと推測できます。しかし、用途体験は用心も必要です。パートタイマーや臨時の仕事で他の人が整えてくれた画面で、名簿の追加、変更、削除だけをひたすら繰り返す作業の体験であれば、メール体験だけの人と大差はないからです。用途体験だけではなく、他のデータと合わせてその人のスキルを判断すればいいわけです。
三つ目の機器やソフトウエアの使用体験、所有ではなく使用体験です。ユーザビリティテストでは被験者にマーケティング面の質問をすることがしばしばあり、所有の有無だけを気にしがちですが、所有だけでなく使用体験の有無が重要です。

つまずき対処行動
パソコンなど道具の使い方がわからず、行き詰まったときの行動、つまずき対処行動もその人の道具使いのスキルを推測する手がかりになります。操作に行き詰まったとき私達は次のような行動をとります。
1.他の人に教えてもらう。
2.取扱い説明書を読む。
3.あれこれ、思い付くことを操作してみる。
4.インターネットで対処方法を調べる。
5.ヘルプを調べる。
6.使うのをあきらめる。
操作に行き詰まったとき、スキルの低い人達は、他の人に教えてもらう、使うのをあきらめるといった行動が目立ちます。逆にスキルの高い人達は、思い付くことを試す、ネットで調べるなど、自分の力で解決しようとします。こういったつまずき対処行動からも、道具使いのスキルレベルを推測することができます。

先生ユーザーと生徒ユーザー
かなり前に、ソフトウエアの取扱説明書のニーズを調べたとき、私は意外なことに気づかされました。取扱説明書はもともと、使い方の知識が少なく、自分の知識だけでは使えないスキルの低い人達が使うものと考えていました。しかし、現実は逆でした。スキルの低い人達の多くは、取扱説明書にあまり期待していませんでした。むしろ、今よりもっと頁数を少くして、掲載する情報も本当に必要な情報だけに絞って欲しいと言います。一方、スキルの高い人達は違いました。もっと頁数を増やし、今以上に多くの情報を盛り込んで欲しいと言いました。
スキルの高い人は先生ユーザーとして、周りの人達に正しい操作方法を教えてあげる役割がありました。実際に様々な情報を必要としているのはスキルの高い人達の方でした。これはコンピューターのソフトウエアのことですが他の分野の製品でもかなり当てはまると思います。取扱説明書やヘルプ 、web上のサポート頁のユーザビリティを確認するときは、スキルの低い人だけでなくスキルの高い人にも被験者になってもらいハンドリングをチェックしてもらうことをお勧めします。このように、スキルの低い人を探すもうひとつのやり方は、その人が先生ユーザーなのか、生徒ユーザーなのか、職場や友人グループなどでの本人の位置付けを質問することです。

よろしければ、当社のホームページをご覧ください。
4 問題を見つけてくれない人達

問題発見を目的としたユーザビリティテスト、被験者になってもらっても、なかなか問題を見つけてくれない、問題を見つけるのが苦手な人達もいます。こういう人達に被験者になってもらうと、たいていの製品は、わかりやすい、使いやすい という評価になり、問題は見逃される可能性大です。では、問題を見つけてくれない人達とはどんな人達でしょうか。

ハードウェア、ソフトウェア、Webサイト、取説など、道具から人々を見ると、道具の作り手と使い手にわけられます。作り手の人たちは問題を見つけるのが苦手な人達です。
Web画面のデザインをする人、ソ フトウェアを設計する人、製品のユーザインタフェースを設計する人、機器などのユーザーが動かす部分を設計する人、このような作り手の人達は問題を見つけるのが苦手です。モノを作り、設計する人は、ユーザーが使うときのことを考えます。画面のどの位置にボタンをどの順番に配置すると、ユーザーはどう受け止めてくれるだろうか、迷わずに最後まで操作を続けられるだろうか、ボタンに表示される名称は「○○」という言葉でわかるだろうか?そういった経験を重ねる中で、機能やサービスをユーザーに選んでもらうやり方にはどんなやり方があるのか、そのやり方はどんな場合に向いているのか。設計する人たちはいろいろと学習し知識を習得していきます。
 
例えば、住宅の玄関のドアを考えて見ましょう。ある人の自宅の玄関ドアはノブを掴んで手前に引けばドアが開くというものでした。ある日、知人の家を訪ねるとその家の玄関ドアはまるで違うタイプでした。大きなハンドルのレバーを引いてからハンドル自身を手前に引くとドアは開きましたが、最初のうちレバーを引くことに気づかず手こずってしまいました。

住宅のドアの設計者だったらどうでしょう。彼等は住宅のドアにはどんなタイプがあるのか、それをどう操作したらいいのか、どういう場所にどのタイプのドアが向いているのか、すでに知識を持っていますから、玄関ドアの操作で戸惑うことはまずありません。

一般ユーザーはどうでしょう。自分の経験したことのないドアに出会えば戸惑ってしまいます。

Webショッピングの画面についても同じようなことが言えます。Web画面をデザインしたり、Webサイトを設計した作り手は、商品を「ショッピングカート」に入れた後、買物の内容を確認するための「確認画面」が現れ、購入が確定する前に中止したり変更したりできるなど、Webショッピングの基本的手順をよーく知っています。しかも、何通りもやり方があるということも知っています。
 一方、Webショッピングに慣れていない一般のユーザー、またはWebショッピングからしばらく遠ざかっていた一般ユーザーはどうでしょう。選んだ覚えのない商品がいつの間にか「ショッピングカート」に入っていたりすると(現実にこのようなWebサイトはあります。)、とても戸惑い、買物を途中で止めてしまうかもしれません。

このように、モノ作りの経験者である「作り手」の人達と一般の「使い手」の人達では道具を使う上での知識に大きな差があります。とくにソフトウェアや、画面作りの経験によって得られる知識はかなり汎用性がありますから、製品分野が違っていても結構想像できてしまうものです。このような「作り手」を被験者に選ぶと少々わかりにくいユーザインタフェースであっても、彼等はすんなり使えてしまうので、一般ユーザーが戸惑うような問題を見つけることはできません。

最近の冷凍食品はそれなりに美味しいものが増えています。それらのパッケージ゛には調理の仕方が書いてあります。私は以前、冷凍の五目そばを買って自分で作って食べたことがあります。その商品はたまたま、2食分がひとつのパーケージに入っていました。調理の仕方を読むと、それがひとり分なのかふたり分なのか書いておらず、私はとても迷ってしまい、その食品のメーカーに電話してききました。その話を妻にすると、そんなこと常識で誰だって想像つくから書いてなくても困らないと言います。料理の作り手、主婦にとってはまったくの常識として片付けられる知識でしょうが、経験の浅い一般ユーザーである私には、とても重要な情報をパッケージから得ることができなかったわけです。たいていの冷凍食品には、1食分の調理法であることが、きちんと表示されています。たまたま、私が買った商品がその情報を記載していなかったのです。冷凍食品のユーザビリティテストの被験者に主婦を選べば、私が困った「1食分なのか2食分なのかわからないで戸惑う」という問題は当然、見逃されてしまいます。

次に、作り手ではないが、問題を見つけられないという人達もいます。どんな人達でしょうか?
それは、評価対象製品と同じ機種を使っている人、または、よく似たユーザインタフェースの機種を使っている人です。

あなたに質問です。あなたの会社では、スマートフォン用の メールソフトを販売しシェアは3位です。次のバージョンの試作版ができました。署名作成機能を拡充し、それにともなってユーザインタフェースが一新されました。新しいユーザインタフェースはユーザーに受け入れられるか、ユーザビリティテストで確かめることになりました。あなたなら、どんな被験者を選びますか?そしてどんな被験者は選びませんか?
3 問題を見つけてくれる人達

スキルの低い人達だけが問題を起こすわけではありませんが、でも、1番は機器を使うスキルの低い人達です。彼等はわずかでも不親切な作りの道具を使うときは、最初の操作からどう手をつけていいかわからなかったり、途中でどう操作したらいいかわからなくなったり、結局、誰かに教えてもらわないと先に進めないといったことがよくあります。たいていどこかの操作ステップでつまずくことが多い人達ですが、道具は何も使いたくないと思っているわけではありません。不安は感じていても使える道具なら使ってみる意欲はある人達です。
 
 道具使いの苦手なスキルの低い人達は、生まれつきスキルが低かったわけではありません。道具を使う経験が少なく、様々なユーザーインタフェースの使用経験がなく、操作方法を想像できるだけの知識が蓄積されなかっただけです。交差点の信号機についている赤信号、その右や下に緑色の矢印が表示されます。都市の人通りの多い交差点のいくつかはスクランブル交差点になっています。これらをはじめて経験したとき、人々は戸惑ったはずです。たまたまいっしょに曲がろうとしていた車や渡ろうとしていた歩行者がいたから、私たちは安全に進むことができ、新しいユーザーインタフェースの学習もできました。道具を使うスキルの低い人達はたまたま、新しい機器を使う機会にめぐまれず、新しいユーザーインタフェースの知識を獲得しないまま今日に至っているだけです。

 道具使いのスキルの低い人々に共通する性質があります。基本的には、彼等のこの性質がいつまでもスキルを低いままにしている原因かもしれません。それは、どんな性質でしょうか?
記憶力が悪い、操作の仕方を教えてもらってもすぐに忘れてしまうこと、そういう人もいるでしょうが、共通の性質とは、そのことではありません。手先が不器用、いやいやそのことも違います。もっと根元的な性質です。
 新しい機器、いままで使ってなかった道具を使うことに消極的なこと。確かにそのような性質はありそうです。私は運転歴30年、妻は20年ですが、我が家では妻の方が圧倒的に運転スキルが高いのです。いままで通ったことのなかった細い道路をいつの間にか知っていて、渋滞するこの時間はあっちの道がいい、こっちの道が近い、トラックが少ない、いつの間にか周辺の道路事情をすっかり知って、いつも最適の道路を選択をしながら車を走らせています。運転席の窓のパワーウインドのスイッチ操作にしても、ずーっとスイッチを押し続けることなくワン操作で全開にできることに先に気づいたのは妻の方でした。

 ゲームは別として、人が道具を使うとき、たいていの場合は何らかのタスクつまり、使用目的を意識します。 スキルの高い人達はタスクへの興味と同じくらい道具そのものに対して強い興味をもっています。ところがスキルの低い人達は、タスクには強い興味をもっていますが、そのとき使う道具にはほとんど興味をもっていません。

人々がスマートフォンで受信したメールを読むとき、誰から来たものか、メッセージの内容はどんなものかについては、当然、強い興味をもって読みます。しかし、距離を隔てた場所からメッセージがどうやって今、自分のスマートフォンに送られてきたのか。送られてきたメッセージはこのスマートフォンの何処に記録されているのか、このような道具自身への興味を、道具を使うスキルの高い人達は強く持っていますが、スキルの低い人達はあまり興味を示しません。
スキルの低い人達に見られる共通の性質とはこのことです。道具への興味の強い人達は一度使っただけでも、道具に関するいろいろな知識を習得しますが、道具への興味が小さな人達は、何度道具を使っても知識をなかなか習得しません。
 
 問題を見つけてくれる人達には、その他に、どんな人たちがいるでしょうか。それは、評価対象とはユーザインタフェースの異なる機種を使い、そのユーザインタフェースにすっかり習熟している人達、つまり異なるユーザーインタフェースの経験者です。スマートフォンが爆発的に普及する前、多くの人々は携帯電話を使って、メールを受発信していました。私たちの指先には文字入力の操作方法が沁み込んでいました。濁点の入力の仕方、記号の入力方法などちょっとしたユーザインタフェースの違いがとても気になり、できることなら今までに慣れ親しんでいたやり方を変えずに使いたいと思っていた人が多かったと思います。
 とくに、文字入力はいちいち頭で考え判断して操作するものではなく、指先が覚えていて反射的に操作しますから、機種が新しくなったからと言ってそう簡単に変えられるものではありません。
 開発中の新製品の側から言えば、すでに社会で多くの人々に使用されている既存機種のユーザインタフェースに慣れてしまったユーザーが開発中の新製品に乗り換えてくれたとき、すでに指先まで染みているこれまでの感覚から新しい製品の感覚にすんなりと移行してもらえるか、どうかが重要な課題です。

 日本国内に携帯電話機のメーカーが沢山あってシェア争いを続けていた時期、携帯電話は毎年のように新機種が開発、発売されユーザーは次々に新機種を買い求めました。その携帯電話の開発途中でユーザビリティテストをするとき、被験者はまず自社機ユーザー、それから有力競合機種のユーザーを選びました。まず、自社機のユーザーが新機種のユーザインタフェースを違和感無く受け入れてもらえるか、競合他社機のユーザーはどうか、新しい操作方法に違和感無く移行できそうかの確認をするためでした。

 結局、ユーザビリティテストで問題を見つけてくれる人達はどんな人か、もちろん、ターゲットユーザー層の中でのことです。第一に、道具使いのスキルが低く、いろいろな機器、製品、ウェブサイトなどを使うのが苦手な人達です。そして第二は、すでに特定のユーザインタフェースを経験していてその経験自体が、開発中の新製品を使う上でネックとなるかもしれないと思われる人々です。

では、あなたに質問です。逆に問題を見つけてくれない人達はどんな人達でしょうか。問題を見つけてもらえず、ユーザビリティテストの被験者に向いてないのはどんな人達でしょうか?
問題を見逃さない基本

ユーザビリティテストで、問題の見逃しをしないための最低限の知識とはいったいどういうことでしょうか。

2 被験者をどう選ぶか

 ユーザーのことを考えてみましょう。同じ製品でも、さっさと使える人、つまずくがあれこれ試して結局使える人、つまずくと説明書を見て調べなんとか使える人、つまずくと人に聞いて教えてもらってやっと使える人、つまずくとあきらめて使うのを止める人、はじめから使う意欲の無い人、ユーザーは製品を使うのが得意な人から苦手な人までいろいろです。

 機器など道具を使う上でスキルの高い人と、低い人では大きな差があります。最もスキルの高い人達をa群、平均的な人達をc群、最もスキルの低い人達をe群、途中の人達をb群、d群としましょう。ユーザビリティテストをしたいとき、どの群の人達に被験者になってもらうか?
 いやいや、そんなことではなく、その製品のターゲットユーザーを被験者に選ぶべきでしょう。もちろんその通りですが、ターゲットユーザーと言っても様々な人達がいます。ターゲットユーザーをなかなか探せない場合も少なくありません。例えばタンカーや大型客船、貨物船を運転している人達はたいてい船に乗って海上にいます。手術機材を使い重病患者の手術をしている人達はとても忙しくてめったに被験者にはなってくれません。ターゲットユーザーに被験者になってもらえないというケースは珍しくありません。

 予算をたっぷりかけて長い期間かけて被験者を探せば見つかるでしょうが、実際は限られたコスト、短い日程のなかで探さなければなりません。となると、ターゲットユーザーではないけれどもこの人を選ぶという妥協の必要があるわけです。では妥協する場合のポイントは何でしょうか?

 その話は別の機会にゆずるとして、ターゲットユーザーであると言うだけでいいでしょうか?ターゲットユーザーの中のどんな人を被験者に選べばいいでしょうか。被験者の人数は仮に5人~6人として考えてみましょう。
 
 ひとつ目の考え方は各群からひとりずつ被験者を選ぶという意見です。ある製品のユーザーといえども道具使いの得意なスキルの高い人もいればスキルの低い人もいます。それぞれのスキルレベルから1人ずつ選べばユーザー全体の視点から使いやすさを確認できます。そう言われると確かにその通りだという気がします。
 二つ目の考え方は中間のb群、d群を除いて、a,c,e群から各2人ずつ被験者を選ぶという意見、スキルレベルを典型的なレベル3つと考えれば確かにa群、c群、e群の3つになります。それぞれ2人なら各群1人よりデータとしては安心です。こちらの意見の方がより正確に確実にユーザー全体のデータが得られるようにも思えます。
 三つ目の考え方はc群からだけ被験者を選ぶという意見。ひとつの群から1人か2人では結果の信頼性には疑問が残ります。平均的スキルのc群、5人であれば製品が使いやすいのか、そうでないのかより正確な結果が得られるように思います。
 どの意見もそれぞれなるほどと思わせるものがあります。さて、どういう考え方で被験者を選ぶべきでしょうか。

 ところで、製品開発、システム開発の過程でユーザビリティテストをするとき、その目的は何でしょうか?ほとんどの場合、そのままの仕様では発売後に発生する使い勝手上の問題を発見することを目的としています。では、問題は誰が起こすでしょうか? 製品を使うユーザーの中で、どういう人達が問題を起こし、どういう人達は問題を起こさないのでしようか? 
 まず言えること、問題を起こすのはまるで機器や画面など道具使いの苦手な人、機器などを使うスキルの低い人達です。私たちの身の回りを見渡せばなるほどそうに違いないと思うはずです。

 しかし、スキルの低い人達であってもスイスイ使えて全くつまずかないこともあります。例えば、ある人がたびたび、自分の携帯電話で目覚まし用のアラーム機能を使っているとします。この人に被験者になってもらって、その人の携帯電話を使い、アラーム設定のタスクをしたらどうでしょうか?当然その人はスムーズに使えるでしょう。 携帯電話のアラーム設定タスクに隠されている使い勝手の問題を洗い出すとき、その製品で毎日アラーム設定を繰り返し使っているような人を被験者に選べば、当然ながら、問題は見つかりません。潜んでいた問題は見逃されてしまいます。

では、問題を起こす人は、スキルの低い人達だけでしょうか?
プロフィール

HN:
小畑 貢
性別:
男性
職業:
ユーザビリティ・コンサルタント
自己紹介:
株式会社ヒューマンインタフェースの代表取締役 小畑 貢です。

弊社はユーザビリティ評価及び関連サービスを提供しています。
市販の商品や開発途中の試作品(ソフトウェア含む)を対象に、一般ユーザーが使用する様子を観察、分析し、ユーザーがどの程度使うことができるか、何を改良するべきかを提案します。

弊社ホームページもご覧ください。
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