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株式会社ヒューマンインタフェース代表取締役 小畑 貢 が使い手の世界についてのお話をお送りします。
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4 問題を見つけてくれない人達

問題発見を目的としたユーザビリティテスト、被験者になってもらっても、なかなか問題を見つけてくれない、問題を見つけるのが苦手な人達もいます。こういう人達に被験者になってもらうと、たいていの製品は、わかりやすい、使いやすい という評価になり、問題は見逃される可能性大です。では、問題を見つけてくれない人達とはどんな人達でしょうか。

ハードウェア、ソフトウェア、Webサイト、取説など、道具から人々を見ると、道具の作り手と使い手にわけられます。作り手の人たちは問題を見つけるのが苦手な人達です。
Web画面のデザインをする人、ソ フトウェアを設計する人、製品のユーザインタフェースを設計する人、機器などのユーザーが動かす部分を設計する人、このような作り手の人達は問題を見つけるのが苦手です。モノを作り、設計する人は、ユーザーが使うときのことを考えます。画面のどの位置にボタンをどの順番に配置すると、ユーザーはどう受け止めてくれるだろうか、迷わずに最後まで操作を続けられるだろうか、ボタンに表示される名称は「○○」という言葉でわかるだろうか?そういった経験を重ねる中で、機能やサービスをユーザーに選んでもらうやり方にはどんなやり方があるのか、そのやり方はどんな場合に向いているのか。設計する人たちはいろいろと学習し知識を習得していきます。
 
例えば、住宅の玄関のドアを考えて見ましょう。ある人の自宅の玄関ドアはノブを掴んで手前に引けばドアが開くというものでした。ある日、知人の家を訪ねるとその家の玄関ドアはまるで違うタイプでした。大きなハンドルのレバーを引いてからハンドル自身を手前に引くとドアは開きましたが、最初のうちレバーを引くことに気づかず手こずってしまいました。

住宅のドアの設計者だったらどうでしょう。彼等は住宅のドアにはどんなタイプがあるのか、それをどう操作したらいいのか、どういう場所にどのタイプのドアが向いているのか、すでに知識を持っていますから、玄関ドアの操作で戸惑うことはまずありません。

一般ユーザーはどうでしょう。自分の経験したことのないドアに出会えば戸惑ってしまいます。

Webショッピングの画面についても同じようなことが言えます。Web画面をデザインしたり、Webサイトを設計した作り手は、商品を「ショッピングカート」に入れた後、買物の内容を確認するための「確認画面」が現れ、購入が確定する前に中止したり変更したりできるなど、Webショッピングの基本的手順をよーく知っています。しかも、何通りもやり方があるということも知っています。
 一方、Webショッピングに慣れていない一般のユーザー、またはWebショッピングからしばらく遠ざかっていた一般ユーザーはどうでしょう。選んだ覚えのない商品がいつの間にか「ショッピングカート」に入っていたりすると(現実にこのようなWebサイトはあります。)、とても戸惑い、買物を途中で止めてしまうかもしれません。

このように、モノ作りの経験者である「作り手」の人達と一般の「使い手」の人達では道具を使う上での知識に大きな差があります。とくにソフトウェアや、画面作りの経験によって得られる知識はかなり汎用性がありますから、製品分野が違っていても結構想像できてしまうものです。このような「作り手」を被験者に選ぶと少々わかりにくいユーザインタフェースであっても、彼等はすんなり使えてしまうので、一般ユーザーが戸惑うような問題を見つけることはできません。

最近の冷凍食品はそれなりに美味しいものが増えています。それらのパッケージ゛には調理の仕方が書いてあります。私は以前、冷凍の五目そばを買って自分で作って食べたことがあります。その商品はたまたま、2食分がひとつのパーケージに入っていました。調理の仕方を読むと、それがひとり分なのかふたり分なのか書いておらず、私はとても迷ってしまい、その食品のメーカーに電話してききました。その話を妻にすると、そんなこと常識で誰だって想像つくから書いてなくても困らないと言います。料理の作り手、主婦にとってはまったくの常識として片付けられる知識でしょうが、経験の浅い一般ユーザーである私には、とても重要な情報をパッケージから得ることができなかったわけです。たいていの冷凍食品には、1食分の調理法であることが、きちんと表示されています。たまたま、私が買った商品がその情報を記載していなかったのです。冷凍食品のユーザビリティテストの被験者に主婦を選べば、私が困った「1食分なのか2食分なのかわからないで戸惑う」という問題は当然、見逃されてしまいます。

次に、作り手ではないが、問題を見つけられないという人達もいます。どんな人達でしょうか?
それは、評価対象製品と同じ機種を使っている人、または、よく似たユーザインタフェースの機種を使っている人です。

あなたに質問です。あなたの会社では、スマートフォン用の メールソフトを販売しシェアは3位です。次のバージョンの試作版ができました。署名作成機能を拡充し、それにともなってユーザインタフェースが一新されました。新しいユーザインタフェースはユーザーに受け入れられるか、ユーザビリティテストで確かめることになりました。あなたなら、どんな被験者を選びますか?そしてどんな被験者は選びませんか?
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プロフィール

HN:
小畑 貢
性別:
男性
職業:
ユーザビリティ・コンサルタント
自己紹介:
株式会社ヒューマンインタフェースの代表取締役 小畑 貢です。

弊社はユーザビリティ評価及び関連サービスを提供しています。
市販の商品や開発途中の試作品(ソフトウェア含む)を対象に、一般ユーザーが使用する様子を観察、分析し、ユーザーがどの程度使うことができるか、何を改良するべきかを提案します。

弊社ホームページもご覧ください。
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