忍者ブログ
株式会社ヒューマンインタフェース代表取締役 小畑 貢 が使い手の世界についてのお話をお送りします。
[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

問題を見逃さないユーザビリティテスト
5 スキルの低い人達をどうやって見つけるか

選ぶ前に被験者を探す必要があります。探すのは3つくらいの方法があります。まず、社内のネットワークを利用して探す場合、規模の大きい会社ではユーザビリティテストの被験者として協力できる社員を予め登録してある会社があります。また、グループ会社として人材を提供する会社をお持ちのところもあります。そういった仕組みを利用して被験者を探します。
次の方法は、社内の仕組みに頼らず、ユーザビリティテストをしたいと希望している方たちが、アルバイト募集広告などを利用して自分達で直接探すやり方です。その次の方法は、被験者を探してくれる会社に依頼して探すやり方です。私の会社のヒューマンインタフェースも被験者を探すサービスを提供しています。

どの方法で被験者を探すにしても、スキルの低い人達を選ばなくてはなりません。では、どうするか。仮に最終的に6人の被験者を選ぶとしたら、その数倍、できれば20人くらいの候補者の中から選ぶことになります。「私は道具使いが苦手です」と言う人だけに応募をお願いすることも可能ですが、そううまくはいきません。スキルの低い人だけを募集しますと言っても、スキルの高い低いはひとりひとりによって判断は、まちまちです。当然、スキルの高い人も混じってしまいます。さらに、人々が被験者に選ばれたいと思ったら、自分のプロフィールを偽って応募する人がでてきます。募集する段階では選考基準は曖昧に示し、具体的に明確には示さないのが原則です。

では、スキルの低い人をどうやって探したらいいでしょうか、応募者(ユーザビリティテストに被験者として協力しますと申し出た人)のスキルレベルを判断するための質問と回答選択肢を用意しますが、いくつかの有効な質問があります。ひとつ目はパソコンのスキル質問です。二つ目はパソコンの用途質問。三つ目は機器やソフトウエアの使用体験質問、こういった質問が有効です。

パソコンのスキル質問
ひとつ目、パソコンのスキル質問です。簡単なものから難しいものまで具体的なパソコン操作をリストアップします。そして、初心者、初級者、中級者、上級者の各レベルに割り当てます。例えば次のように。
●パソコンの電源を入れたり終了したりできる。
●パソコン内に保管してある文書を印刷する。
●パソコンで写真の大きさ、位置を調整しながら写真と文章の混じった文書を作る。
●パソコンで作った文書を暗号化、圧縮、メールに添付して送る。
●パソコンで作った文書をいっさい変更できないようにする。
このような操作をどこまでできるかがわかると、その人のパソコン操作スキルを見当つける上で大変有効な判断材料になります。
二つ目はパソコンの用途体験です。メールだけ体験している人と、メールと名簿作成の両方を体験している人では、明らかにメールだけの人の方がスキルが低いと推測できます。しかし、用途体験は用心も必要です。パートタイマーや臨時の仕事で他の人が整えてくれた画面で、名簿の追加、変更、削除だけをひたすら繰り返す作業の体験であれば、メール体験だけの人と大差はないからです。用途体験だけではなく、他のデータと合わせてその人のスキルを判断すればいいわけです。
三つ目の機器やソフトウエアの使用体験、所有ではなく使用体験です。ユーザビリティテストでは被験者にマーケティング面の質問をすることがしばしばあり、所有の有無だけを気にしがちですが、所有だけでなく使用体験の有無が重要です。

つまずき対処行動
パソコンなど道具の使い方がわからず、行き詰まったときの行動、つまずき対処行動もその人の道具使いのスキルを推測する手がかりになります。操作に行き詰まったとき私達は次のような行動をとります。
1.他の人に教えてもらう。
2.取扱い説明書を読む。
3.あれこれ、思い付くことを操作してみる。
4.インターネットで対処方法を調べる。
5.ヘルプを調べる。
6.使うのをあきらめる。
操作に行き詰まったとき、スキルの低い人達は、他の人に教えてもらう、使うのをあきらめるといった行動が目立ちます。逆にスキルの高い人達は、思い付くことを試す、ネットで調べるなど、自分の力で解決しようとします。こういったつまずき対処行動からも、道具使いのスキルレベルを推測することができます。

先生ユーザーと生徒ユーザー
かなり前に、ソフトウエアの取扱説明書のニーズを調べたとき、私は意外なことに気づかされました。取扱説明書はもともと、使い方の知識が少なく、自分の知識だけでは使えないスキルの低い人達が使うものと考えていました。しかし、現実は逆でした。スキルの低い人達の多くは、取扱説明書にあまり期待していませんでした。むしろ、今よりもっと頁数を少くして、掲載する情報も本当に必要な情報だけに絞って欲しいと言います。一方、スキルの高い人達は違いました。もっと頁数を増やし、今以上に多くの情報を盛り込んで欲しいと言いました。
スキルの高い人は先生ユーザーとして、周りの人達に正しい操作方法を教えてあげる役割がありました。実際に様々な情報を必要としているのはスキルの高い人達の方でした。これはコンピューターのソフトウエアのことですが他の分野の製品でもかなり当てはまると思います。取扱説明書やヘルプ 、web上のサポート頁のユーザビリティを確認するときは、スキルの低い人だけでなくスキルの高い人にも被験者になってもらいハンドリングをチェックしてもらうことをお勧めします。このように、スキルの低い人を探すもうひとつのやり方は、その人が先生ユーザーなのか、生徒ユーザーなのか、職場や友人グループなどでの本人の位置付けを質問することです。

よろしければ、当社のホームページをご覧ください。
PR
コメントを投稿する

HN
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
管理人のみ閲覧可
プロフィール

HN:
小畑 貢
性別:
男性
職業:
ユーザビリティ・コンサルタント
自己紹介:
株式会社ヒューマンインタフェースの代表取締役 小畑 貢です。

弊社はユーザビリティ評価及び関連サービスを提供しています。
市販の商品や開発途中の試作品(ソフトウェア含む)を対象に、一般ユーザーが使用する様子を観察、分析し、ユーザーがどの程度使うことができるか、何を改良するべきかを提案します。

弊社ホームページもご覧ください。
P R