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株式会社ヒューマンインタフェース代表取締役 小畑 貢 が使い手の世界についてのお話をお送りします。
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3 問題を見つけてくれる人達

スキルの低い人達だけが問題を起こすわけではありませんが、でも、1番は機器を使うスキルの低い人達です。彼等はわずかでも不親切な作りの道具を使うときは、最初の操作からどう手をつけていいかわからなかったり、途中でどう操作したらいいかわからなくなったり、結局、誰かに教えてもらわないと先に進めないといったことがよくあります。たいていどこかの操作ステップでつまずくことが多い人達ですが、道具は何も使いたくないと思っているわけではありません。不安は感じていても使える道具なら使ってみる意欲はある人達です。
 
 道具使いの苦手なスキルの低い人達は、生まれつきスキルが低かったわけではありません。道具を使う経験が少なく、様々なユーザーインタフェースの使用経験がなく、操作方法を想像できるだけの知識が蓄積されなかっただけです。交差点の信号機についている赤信号、その右や下に緑色の矢印が表示されます。都市の人通りの多い交差点のいくつかはスクランブル交差点になっています。これらをはじめて経験したとき、人々は戸惑ったはずです。たまたまいっしょに曲がろうとしていた車や渡ろうとしていた歩行者がいたから、私たちは安全に進むことができ、新しいユーザーインタフェースの学習もできました。道具を使うスキルの低い人達はたまたま、新しい機器を使う機会にめぐまれず、新しいユーザーインタフェースの知識を獲得しないまま今日に至っているだけです。

 道具使いのスキルの低い人々に共通する性質があります。基本的には、彼等のこの性質がいつまでもスキルを低いままにしている原因かもしれません。それは、どんな性質でしょうか?
記憶力が悪い、操作の仕方を教えてもらってもすぐに忘れてしまうこと、そういう人もいるでしょうが、共通の性質とは、そのことではありません。手先が不器用、いやいやそのことも違います。もっと根元的な性質です。
 新しい機器、いままで使ってなかった道具を使うことに消極的なこと。確かにそのような性質はありそうです。私は運転歴30年、妻は20年ですが、我が家では妻の方が圧倒的に運転スキルが高いのです。いままで通ったことのなかった細い道路をいつの間にか知っていて、渋滞するこの時間はあっちの道がいい、こっちの道が近い、トラックが少ない、いつの間にか周辺の道路事情をすっかり知って、いつも最適の道路を選択をしながら車を走らせています。運転席の窓のパワーウインドのスイッチ操作にしても、ずーっとスイッチを押し続けることなくワン操作で全開にできることに先に気づいたのは妻の方でした。

 ゲームは別として、人が道具を使うとき、たいていの場合は何らかのタスクつまり、使用目的を意識します。 スキルの高い人達はタスクへの興味と同じくらい道具そのものに対して強い興味をもっています。ところがスキルの低い人達は、タスクには強い興味をもっていますが、そのとき使う道具にはほとんど興味をもっていません。

人々がスマートフォンで受信したメールを読むとき、誰から来たものか、メッセージの内容はどんなものかについては、当然、強い興味をもって読みます。しかし、距離を隔てた場所からメッセージがどうやって今、自分のスマートフォンに送られてきたのか。送られてきたメッセージはこのスマートフォンの何処に記録されているのか、このような道具自身への興味を、道具を使うスキルの高い人達は強く持っていますが、スキルの低い人達はあまり興味を示しません。
スキルの低い人達に見られる共通の性質とはこのことです。道具への興味の強い人達は一度使っただけでも、道具に関するいろいろな知識を習得しますが、道具への興味が小さな人達は、何度道具を使っても知識をなかなか習得しません。
 
 問題を見つけてくれる人達には、その他に、どんな人たちがいるでしょうか。それは、評価対象とはユーザインタフェースの異なる機種を使い、そのユーザインタフェースにすっかり習熟している人達、つまり異なるユーザーインタフェースの経験者です。スマートフォンが爆発的に普及する前、多くの人々は携帯電話を使って、メールを受発信していました。私たちの指先には文字入力の操作方法が沁み込んでいました。濁点の入力の仕方、記号の入力方法などちょっとしたユーザインタフェースの違いがとても気になり、できることなら今までに慣れ親しんでいたやり方を変えずに使いたいと思っていた人が多かったと思います。
 とくに、文字入力はいちいち頭で考え判断して操作するものではなく、指先が覚えていて反射的に操作しますから、機種が新しくなったからと言ってそう簡単に変えられるものではありません。
 開発中の新製品の側から言えば、すでに社会で多くの人々に使用されている既存機種のユーザインタフェースに慣れてしまったユーザーが開発中の新製品に乗り換えてくれたとき、すでに指先まで染みているこれまでの感覚から新しい製品の感覚にすんなりと移行してもらえるか、どうかが重要な課題です。

 日本国内に携帯電話機のメーカーが沢山あってシェア争いを続けていた時期、携帯電話は毎年のように新機種が開発、発売されユーザーは次々に新機種を買い求めました。その携帯電話の開発途中でユーザビリティテストをするとき、被験者はまず自社機ユーザー、それから有力競合機種のユーザーを選びました。まず、自社機のユーザーが新機種のユーザインタフェースを違和感無く受け入れてもらえるか、競合他社機のユーザーはどうか、新しい操作方法に違和感無く移行できそうかの確認をするためでした。

 結局、ユーザビリティテストで問題を見つけてくれる人達はどんな人か、もちろん、ターゲットユーザー層の中でのことです。第一に、道具使いのスキルが低く、いろいろな機器、製品、ウェブサイトなどを使うのが苦手な人達です。そして第二は、すでに特定のユーザインタフェースを経験していてその経験自体が、開発中の新製品を使う上でネックとなるかもしれないと思われる人々です。

では、あなたに質問です。逆に問題を見つけてくれない人達はどんな人達でしょうか。問題を見つけてもらえず、ユーザビリティテストの被験者に向いてないのはどんな人達でしょうか?
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プロフィール

HN:
小畑 貢
性別:
男性
職業:
ユーザビリティ・コンサルタント
自己紹介:
株式会社ヒューマンインタフェースの代表取締役 小畑 貢です。

弊社はユーザビリティ評価及び関連サービスを提供しています。
市販の商品や開発途中の試作品(ソフトウェア含む)を対象に、一般ユーザーが使用する様子を観察、分析し、ユーザーがどの程度使うことができるか、何を改良するべきかを提案します。

弊社ホームページもご覧ください。
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