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株式会社ヒューマンインタフェース代表取締役 小畑 貢 が使い手の世界についてのお話をお送りします。
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ユーザビリティテストの恐ろしい一面 ~私がこのブログを書こうと思ったわけ

メーカーの品質管理部門のマネジャーからある悩みを聞いた。新製品開発の過程で様々な品質が目標をクリヤーしているか検査をする。事業部全体では大勢のスタッフが様々な品質の検査に当たっている。現在はユーザビリティも検査項目のひとつになっていて数多くの検査とともに各検査担当者がユーザビリティテストをして品質を検査している。
にも関わらず製品出荷後 ユーザビリティ上の問題が発生したがそれは開発段階で、すでに検査し問題が起こらないはずだった。タスクは設定していたのか、問題を見逃したのか、せっかく問題を見つけても改良案が的外れだったのか、そのことは定かではない。ご承知の通りユーザビリティテストではタスクを決めて被験者に体験させる。なので、そのタスクで起こり得る問題はすでに発見され再発しないように改良されているはず、とマネジャーが考えるのも当然かもしれない。

改良はその時の様々な事情で先送りされることは少なくない。しかし、先送りされたのなら市場で問題が再発しても「やっぱり、問題が出たか!」と残念に思うだろう。しかし、「テストしたのに何故?」と感じるのは問題見逃しの可能性を否定できない。大勢いる検査担当者が適切にユーザビリティテストを実施できているのか、最低限の必要な能力をもっているのかわからない。

私は年間に数回のセミナー講師を務める。テーマはユーザビリティテストである。10年以上前にはメーカーのデザイン部門などの人が多かったが、最近は品質管理部門の人たち、Webデザインもユーザビリティ検証もやっているという人たちが多い。セミナーに参加するのだから、知識が少ないのは当然なのだが、中にはすでに業務としてユーザビリティテストを担当している人たちもいる。そういう人たちでさえ、質問をすると「えっ!」と疑いたくなるような答えが返ってくることは珍しくない。目の前のこの人たちはたまたまセミナーに参加したから、正しい知識を仕入れてもらえるが、セミナーに参加していない多くの同じような人たちがいて、その人たちはどんなやり方でどんな品質のユーザビリティテストをしているのだろうかと恐ろしい気持ちになることがしばしばである。さらに不幸なことに、彼等が所属する部門にはマネジャーがいるが、マネジャーにも彼等の業務の品質が良いのか、良くないのか、判断する手立てがないらしい。

話を戻す。製品出荷後に、起こらないはずのユーザビリティ上の問題が発生したというを聞いて、私は「やっぱり」と思った。ユーザビリティテストはわかりやすさ、使いやすさの問題を見つける素晴らしく有効な手法だが、とても恐ろしい一面をもっているからだ。ユーザビリティテストは被験者にタスクを与え、被験者はひとりでタスクの操作をする。このときの被験者の行動を詳しく観察することで問題の有無を判断する。「被験者が示した行動」という客観的データによって結果が導き出される。

ここまではいいのだが、肝心の被験者の行動が、真実のユーザーの姿を表現したものであるか否かは神のみぞ知るなのだ。ユーザビリティテストは知識の不十分な人が使うととても危険なツールだということをわかってもらいたい。私は25年間、ユーザビリティ評価、とくにユーザビリティテストを本業として続けてきた。この間、様々な評価対象を様々な目標を掲げて評価し、多くのことに気づき、学んだ。
ヒューマンインタフェースというユーザビリティ評価専門の会社を作った1901年頃の日本では、ユーザビリティという言葉は一般には全く知られていなかったし、特別な専門家の関心事だった。しかし、現在ではユーザビリティという言葉は社会にあふれているし、ウェブサイトの画面デザインをする人をはじめとして、前述のように開発中の製品の品質測定をする人達の仕事にまで広がっている。

では、問題の見逃しをしないための最低限の知識とはいったいどういうことなのか。次稿以降で述べたい。
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プロフィール

HN:
小畑 貢
性別:
男性
職業:
ユーザビリティ・コンサルタント
自己紹介:
株式会社ヒューマンインタフェースの代表取締役 小畑 貢です。

弊社はユーザビリティ評価及び関連サービスを提供しています。
市販の商品や開発途中の試作品(ソフトウェア含む)を対象に、一般ユーザーが使用する様子を観察、分析し、ユーザーがどの程度使うことができるか、何を改良するべきかを提案します。

弊社ホームページもご覧ください。
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