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株式会社ヒューマンインタフェース代表取締役 小畑 貢 が使い手の世界についてのお話をお送りします。
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製品の弱点を見つける
最悪のシナリオを検討する上で、基本は製品の弱点を認識することです。 では、製品の弱点を見逃さないためには、作り手として早期に弱点を認識するには、どうしたらいいでしょうか? 私の家の太陽光発電システムが、稼働後6年にして初めて故障しました。台所の壁に設置した液晶画面にエラー表示が出ました。発電が停止しているので、ある操作をしなさいとのこと。その操作をしても結局なおらず、保守の人が来てくれました。彼の説明によると、建物の壁面にコントロールボックスが取り付けてありその中に直流を交流に変換する基板があり、変換する際に発生する熱を冷却するためにファンがあるとのこと。その冷却が正常に働かないためシステムエラーとして画面にエラー表示が出て、発電が停止したということでした。発電が停止するというのはまさしくこの製品の弱点です。この弱点は人の操作によって現実化したわけではありません。状態の変化が弱点を現実化させたのです。 発電停止につながる要素 1 吸気口付近の外気温度 2 吸気口 3 ファン(駆動機構含む) 4 発熱部(基板) 5 排気口 6 信号伝達部 以上、発電停止につながる可能性のある6つの要素をリストアップしました。次に、個々の要素の状態を正常状態に維持し異常状態にさせない工夫や異常状態になる可能性を低減する工夫は出来ないでしょうか。 吸気口付近の外気温度の場合 このように、弱点現実化の可能性を絞り込んだ後、使い手に気をつけて欲しい弱点が最後に残ります。その弱点を、開発し、製品を提供した作り手は、使い手に対してしっかり伝える義務があります。マイホームを購入した方は経験があると思いますが、私たちがマイホームを買うとき、売り手は必ず、重要事項の説明をしなければなりません。患者の手術に取り組むドクターはこれから行う手術の弱点(リスク)について事前に充分説明します。同じことだと私は思います。 PR 最悪のシナリオ 4
製品の弱点を現実化しやすくするタスク以外の要素について考えましょう。 要素2 (1)劣悪な照明条件 (3)騒音 (4)降雨、降雪 (5)狭い作業空間 要素3 要素4 (1)性質 (2)身体能力(身長、体重、握力、視力、聴力、利き手) (3)経験、知識(類似製品の使用経験、類似タスクの経験) (4)身体的疲労、痛み、 低周波で治療する道具がすでに市販され多くの人々が健康維持するために使っています。人の身体に直接パッドを貼って、コリや痛みを軽減、解消するヘルスケア用品です。この製品は、一定の禁止事項は守って使わなければなりません。禁止事項の一つに「左右のふくらはぎに同時にパッドを貼って治療してはならない」ということがあります。長時間の立ち作業やランニングなどで、両脚ともに疲労している。こういう状態の人はやってみたくなるかもしれません。このように身体的疲労や痛みも製品の弱点を現実化しやすくする要素です。 最悪のシナリオ-3
製品の弱点を現実化しやすくする要素 たいていの製品は多かれ少なかれ、弱点を持っています。しかし、弱点があっても即、不幸な結果に繋がるわけではありません。弱点が現実のものとなり不幸な結果が起こってしまうには、弱点を現実化しやすくする条件が整う必要があります。では、弱点を現実化しやすい条件とはどんなことでしょうか? 要素1 タスクの内容に関してはどうでしょうか?あなたは、どういう要素を持つタスクが弱点を現実化しやすくすると思いますか? ●マルチタスク 余談ですが、娘が結婚する前、我が家には車を運転できる人が3人いました。娘と妻は運転が上手く発進も停止も静かでスムースです。その点、私の運転はとくに停止するとき、乗っている人の上体がカックンとなり気持ち悪いと評判が悪いのです。運転している私自身はとくに不具合は感じないのですが、いつも言われます。中でも娘は、運転中によくしゃべります。運転しながら込み入った会話を長々とするので私は、しばしば、話はいい加減にして運転に集中してくれと言います。娘は、決まって、運転なんて話ながらするものだ、黙ってやるもんじゃないと教習所の教官に教えられたと反論します。確かに運転は私より上手いので私はそれ以上言えません。 11目標設定-2、マルチタスクを参考にしてください。 ●繰返しタスク ●緊急時タスク ●条件変化 ●ユーザー交替
●片手作業 ●併用、同時使用のモノ 以上、製品の弱点が現実化しやすいタスク要素について述べましたが、あなたが担当する製品に当てはまるものはありましたか? 最悪のシナリオ-2
最悪のシナリオを検討するとき、私達はどのように何をしたらいいのでしょうか? 最悪のシナリオの検討 あなたが担当する製品の場合、どのような最悪のシナリオがあり得るでしょうか?そしてどのように検討したらいいでしょうか?個々の製品によっても、製品開発のタイプによっても大きく違うでしょうから、以下はヒントにしてください。 最悪のシナリオとは、「重大な結果につながる可能性のある事態が起こりやすい状況」と考えてください。 製品の弱点認識 小型ガソリンタンクの事例のように、製品には、こんな使い方をするととんでもない悪いことが起こると言うような弱点があります。まずは弱点をしっかり認識することです。 弱点とは、とんでもないことが必ず起こる、ではなく、起こる可能性があると思われることです。 開発中の製品の場合、「安全にお使いいただくために」「警告」「禁止事項」「注意」などとして取説や画面や現場に表示される予定の情報が参考になりますが、まだ出来ていない場合もあるでしょう。 そういう場合は、すでに市販されているシリーズ製品や、他社の類似製品を参考にできるかもしれません。 当然、開発者が弱点を充分認識していない場合もあると思われます。そんな場合はあなたが問題提起し、早目に製品の弱点を明確にしましょう。 開発が進み、発売間近になってから新たな弱点が見えてくると発売時期は遅れ、コストアップになり、本当に販売していいのか、振り出しに戻ってしまうこともあります。万一、発売後に重大事故が起こってしまうと一企業の問題ではすみません。大変な社会的制裁を受けて一瞬にして信頼を失ってしまいます。 ですから最悪のシナリオは早目に検討する必要があるわけです。 また、あなたが担当する新製品開発のタイプは、さまざまだと思います。あなたの会社にとってまったくの新製品なのか、機能アップ、コストダウン、季節に合わせたリニューアルなどのシリーズ製品なのか、製品開発のタイプによっても弱点把握は違ってくるでしょう。 まったくの新製品ではなく、シリーズ製品の場合は、最初の新製品開発のときに検討し決定した内容で安心してしまい、見直しを忘れがちです。ときどき報道される目を疑うような重大事故はとくに新製品ではなく、前々から家庭や社会のいろいろな場所で使われてきた道具類が多いように私は思います。 製品開発中に蓄積した情報だけにとらわれず、販売した後に使用現場から得られた新たな情報、新たにわかった自社製品の弱点をしっかり認識し、最悪のシナリオを再検討して欲しいと思います。品質保証は、開発が終わり、製品が発売されると開発中の作業は一段落しますが、決してそれで終わりではありません。使用現場から見つけた、製品の新しい弱点に立ち向かってください 私たちが被る被害 道具を使っていて私たちが被るかもしれない被害には、どんなものがあるでしょうか? 一般的に、次のようなことが考えられます。ユーザーやその周りの人が、この中の一つでも被害を被る可能性がないか、まっさらな気持ちで検討しましょう。 ・生命の危険、機能障害、怪我、健康被害 ・財産の破損、消失、被害 ・金銭の損失 ・信用の消失 ・データ消去 ・製品自体の破損、故障、使用不可 弱点を定義 弱点は次のように定義します。 製品を (1)どんなユーザーが (2)どんな環境で (3)どのように使うと (4)どんな悪いことが起こる。 と、このように使い方とその結果起こることをしっかり認識してください。製品によって使い方も結果として起こることも様々です。いくつか例を示します。 A・スマートフォンのアプリの例 例えば文字を書くアプリで、編集中に不用意に画面をタッチするとその後のタッチによっては入力済みのデータが消去されてしまいます。そんなの当たり前じゃないか、その通り当たり前です。私はこの原稿を電車の中でスマートフォンを使って書いています。体調のいいときばかりではありません。夜、疲れ気味で、言葉がなかなか出て来ないとき、気づくとつい居眠りということは少なくありません。そして、はっと気づくと入力したはずの文章がバッサリ消えてしまっています。 通勤電車の中でシートに座っている人の8割はスマートフォンか携帯電話を操作しています。歩きも含め移動中こそ、スマートフォンの主要な使用環境なのです。心地よく揺れる電車、スマートフォン使用、居眠り、タッチ操作。これは、タッチ操作であるスマートフォンならではの弱点ですね。 余談ですが、私たちが行う道具の操作は、3種類あります。 一つ目は、意図しない操作。うっかり操作です。本当はその操作をするつもりはないのに、本人が知らないうちに、うっかりやってしまう操作です。あなたも、パソコンやスマートフォンで文章を書くとき、たびたび経験しているはずです。ユーザビリティは、この操作を含みます。 二つ目は、意図した異常な操作です。道具本来の使用目的から逸脱した操作であり、ユーザビリティの範囲外の使い方です。 三つ目は、意図した正常な操作です。私たちが行う普通の操作で、もちろんこの操作はユーザビリティがメインに扱います。 B・携帯電話の例 携帯電話で、どんな状態でも、うっかり「キーロック」ボタンを押すと即入力不可になり、パスワードを入力しない限りロックを解除できないという機種を私は使っていました。 幼児たちは大人が使っている携帯電話に大変興味を持ち、大人が知らないうちにあれこれ操作しますし、私の孫は勝手に誰かに電話をかけてしまいました。その点、この機種は簡単に操作不可にできるのでメリットも大きいのですが、反面パスワードを知らないと元に戻せないという欠点があります。身近に幼児のいる人は、パスワードさえ覚えていればメリットの大きい機種ですが、そうではない人にとってはかなりの弱点になります。 私は携帯電話が突然使えなくなり大変な目に会いました。 C・家庭用血圧計の例 家庭用血圧計の供給電源、ACアダプターを間違えて定格の違うタイプを使うと血圧計が故障する。これは小型機器に共通の弱点ですね。例えば、弱点を克服するために AC アダプターの端子を差し込む口の付近に電源の定格表示の文字が刻印されているとしたら、ユーザーがそれに気づくか? 気づいても意味が伝わるか? その前に、たいていの血圧計は電池式だろうからACアダプターを使うことはないのではと思われるかもしれません。しかし、外国の事情は日本と同じではありません。結構、電池ではなくACアダプターを使う国があるようです。 D・自転車後部シートの例 若い母親がママチャリの後部シートに幼児を乗せて街を走る姿、私たちはよく見かけます。先日、私が仕事先に向かって歩く途中、母親のいないママチャリの後部シートに幼児だけが残され、自転車はスタンドで止まっている現場に出会いました。幼児は3才くらい目を開けて大人しくしています。母親は目の前のドラッグストアで買い物しているに違いありません。私は一瞬、危ない、子供が何かに気をとられて、急に後ろ向きになったら倒れるじゃないか、母親が戻って来るまで横で見ていようか? しかし、かえって子供が泣き出したりしないか、いろいろ気になって、気づいたら結局通りすぎていました。後になってから泣き出されてもいいから側で止まって見守るべきだったと後悔しました。ある時期、ママチャリの後部シートが走行中に車体から外れ乗っていた子供が怪我をする事故が報道されました。後部シートはオプションで自転車店のスタッフが取説を見ながら正しく取り付けてユーザーに渡すことになっていました。この問題は消費者庁で取り上げられ、シートの取り付けミスが指摘されました。正しく取り付けられていない場合、重大な事故につながる可能性があることが明らかになりました。製品の重大な弱点です。よく似た例に、自動車に取り付けるチャイルドシートがあります。取り付けている車の半数くらいは取り付け不良のまま大事な子供を乗せていることが報道されています。 E 立体駐車場の例 報道によると立体駐車場で毎年、事故が続いているそうです。報道で紹介された痛ましい事故は次の通りです。 立体駐車場に保管した車を取りだそうと、ユーザーが入口にあるコントロールパネルに自分の車の番号を入力すると、自分の車が載っているパレットが呼び出され下に降りてくる。この時、運悪く、降りてくるパレットの下を人が歩いていて、その方はパレットに挟まれ不幸な結果になってしまいました。立体駐車場の中には車があるだけで、人はいないという前提で利用していたと思いますが、そうではないケースがあったのです。たまたま、その立体駐車場は外部からの侵入を防ぐため周囲を取り囲んだ屏があったにもかかわらず、人が侵入できました。なぜ人は侵入したのか、報道によるとその人が帰宅するとき、立体駐車場の中を突っ切ると遠回りせず、早く家に着けたようです。いたずら好きな男性ならあり得ない行動とは言えませんし、普通の男性でも酒に酔った場合はあり得る行動のように思います。また、小学生、中学生の男子なら秘密の抜け道にしないとは言えません。人が侵入しようと思えばできる屏だったのだと思います。屏があるから人は外から絶対侵入できないという条件が崩れたとき、重大な事故が起こり得る仕様であったわけです。 F・小型ガソリンタンク 発電機の燃料を保管する小型ガソリンタンク、本来、先にやるべき「ガス抜き」をしないで蓋を開けるとガソリンが吹き出し、大火災になりかねない。前に述べた通り、これは大きな弱点です。 ******ご質問、お問い合わせなどございましたら、コメント欄よりお寄せください。非公開設定も可能です。メールアドレスをご記入頂ければ個別に回答差し上げます。 最悪のシナリオ-1
京都の花火大会で起こった爆発事故、尊い人命を奪い、多くの人々を負傷させるという不幸をもたらしました。小型ガソリンタンクから発電機にガソリンを移すとき、まず内圧調節の銓を緩めガス抜きしてから、ガソリンタンクの銓を開けるべきところ、ガス抜きしないで直接、ガソリンタンクの銓を開けたのではないかとの報道がありました。 ユーザーは使い方を間違えると大事故になりかねないことは知っているはずです。しかし、状況によってはこういう大事故が起こり得ることが証明されました。道具の使い手は、条件次第で、必ずヒューマンエラーを起こします。 ヒューマンエラーが起こりかかっても、途中で使い手にハッと気づかせ、万一気づかせることに失敗しても大惨事にはならない。その仕組みが道具に込められている。21世紀私達が使う道具は、そういう道具でありたいものです。最悪のシナリオはそのための第一歩です。 ユーザビリティテストで、ガソリンタンクから発電機にガソリンを補給するというタスクをすると、通常なら、全ての被験者が100%正しくできるでしょう。そういう、通常は正しく使える被験者に、焦ってしまうような状況を与えて、それでも被験者は正しく使える、仮に使い方を間違えても、大事故にはならない。そのことを確認するために、最悪のシナリオを検討する必要があります。 通常なら何の問題もなく製品を使えるのに、「何かの場合」に急にうまく使えなくなることがあり、その結果不幸なことが起こってしまう。これが最悪のシナリオです。 先に述べた重大タスクを行うときのアンラッキーな状況(何かの場合)を想定する必要があります。 最悪のシナリオはリスクマネージメントとユーザビリティが重なる領域のようです。 そういう最悪の場合でもユーザーはタスクを達成できるか、最悪の事態を回避できるのか、確認する必要があります。特に医療機器の分野では必ず最悪のシナリオを検討するよう国際規格で定められています。最悪のシナリオと言う考え方は、一般的製品の分野でも当てはまるものです。 あなたが担当する製品の場合、最悪のシナリオにもとづくタスクはすでにリストアップされているでしょうか? 福島第一 福島第一原発は巨大地震による津波に襲われ、突然正常に使えなくなりました。単に使えなくなっただけではありません。その結果何が起こったかは皆さんが知っている通りです。 原発は電気を作り出す大きな道具ですが、最悪のシナリオを品質目標に取り込まなかったことが失敗の最大の原因だと思います。 化粧品 この例も、ユーザビリティから離れる要素が大きいと思いますが、わかりやすい例です。 報道によれば、化粧品の使用によって肌に白斑ができ、大勢の人々が深刻な被害に苦しんでおられます。その化粧品には数種類の仲間の化粧品があり、仲間の化粧品を併用すれば美容効果は一段と高まりますと宣伝されました。 開発中に当然、副作用の確認テストはしたのですが、報道によると、3つ以上の商品を組み合わせて使用した場合の確認はしていなかったということです。最悪のシナリオを明らかに想定しえたにも関わらず、目標から外してしまったわかりやすい例で、福島第一原発の例とよく似ています。 停電 停電は、現在の日本ではそうそうあるわけではありませんが、極希に起こります。入院患者をかかえる医療施設では停電のときにも患者を診察し、血圧計などの医療機器を正しく使えなくてはなりません。蝋燭や懐中電灯の薄暗い中でも正確に測定できる必要があります。測定値186を暗さと照明の反射のせいで136と読み間違えれば、その後ドクターに緊急行動を取らせてしまうかもしれません。 こういうケースの表示の視認性は、正しく読み取れる、判読できない、誤読する、の3つに分かれますが、誤読だけは避けなければなりません。 オフィスのコピー機 オフィスのコピー機の場合、A4判のモノクロ原稿3枚を1枚ずつコピーするのはとても簡単なタスクです。オフィスで働く人なら誰でも難なくできるでしょう。しかし、こんな場合はどうでしょうか? ユーザーAさんは 自分の机で、大急ぎで、ある調査データの集計作業をしています。集計が終わったら会議室に急いで届けることになっています。作業途中、A4の資料2枚を1枚ずつモノクロコピーしました。しばらく集計作業してまた、A4の資料2枚を1枚ずつモノクロコピーしました。またも集計作業を続けました。この間、第三者がA4の資料1枚のカラーコピーをしました。コピー機の状態は当然カラーモードです。Aさんは急いでいた集計作業が終わり、結果A4判3枚を急いでモノクロコピーし会議室に届けます。このようなとき、Aさんはコピー機がカラーであることに気づきモノクロコピーをとることができるでしょうか? ヒヤリハット 医療の現場は私達の命や健康に直接関わる分野ですが、ユーザインタフェースと直接関わるヒヤリハット事例を紹介しましょう。 医療機関では医師が書いた処方箋にもとづいて薬剤師が必要な薬品を取りだし患者に渡します。あるとき、医師が指定した薬品とは異なる別の薬品が患者に渡されていたことが判明しました。患者の症状によっては重大な結果になりかねません。 ご存じの通り、病院で診察が終わった後、薬をもらう所では多くの患者が順番を待っています。1人の患者が受け取る薬は3種類も4種類もあり、それらを1か月分もらうといった人が大勢います。そんな中で薬剤師は、大量の薬品の中からできるだけ早く、医師の指示通り正確に薬を選び、正確な数量を取りだし患者さんに渡そうと作業しています。 薬剤師はなぜ、間違えたのでしょう。以下、例え話で説明します。ご存知だと思いますが、錠剤の名前は、例えばアアアアアアアア25mg のように成分の量だけが違う場合がよくあります。当然、同じメーカーの同じ薬品ですからパッケージのデザインも大きさも色使いも全く同じです。品名もほとんど同じ、数字の25が別の数字に変わるだけです。 処方箋に書かれていたのは、アアアアアアアア25mg 、1日1錠、30日分。この医療機関では、この薬は2種類在庫していました。25mg と80mg です。効き目の強い薬が必要なときは80mg 、効き目の弱い薬でよいときは25mg 、中ぐらいの薬にしたいときは25mg を2錠、と言うように使い分けていました。薬剤師はうっかり80mg を選んでしまったのです。 この作業ミスが発生する背景がもう1つありました。薬剤師はつい最近まで別の医療機関に勤務していましたが、別の医療機関では、その錠剤は1種類、25mg のものだけ在庫しており、アアアアアアアアといえば25mg だけでした。このように2つの要素が重なってミスは発生したのです。 余談ですが、20~30年前、多くの取り扱い説明書は機能本位に編集されている場合が多かったのですが、その頃、使いにくい目次でよく見られたのが次の例です。 ・基準点を中心に任意に画像を変倍する(拡大) P46 ・基準点を中心に任意に画像を変倍する(縮小) P47 目次の項目名なのに最後の2文字が違うだけです。ユーザビリティテストをすると、たびたび被験者に読みとばされた記憶があります。 さて、最悪のシナリオを検討するとき、私達はどのように何をしたらいいのでしょうか? | プロフィール
HN:
小畑 貢
HP:
性別:
男性
職業:
ユーザビリティ・コンサルタント
自己紹介:
株式会社ヒューマンインタフェースの代表取締役 小畑 貢です。
弊社はユーザビリティ評価及び関連サービスを提供しています。 市販の商品や開発途中の試作品(ソフトウェア含む)を対象に、一般ユーザーが使用する様子を観察、分析し、ユーザーがどの程度使うことができるか、何を改良するべきかを提案します。 弊社ホームページもご覧ください。 最新記事
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