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株式会社ヒューマンインタフェース代表取締役 小畑 貢 が使い手の世界についてのお話をお送りします。
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問題を見逃さないテストデザイン 9 ゴールの設定

私の長年の経験では、タスクのゴールの付近は問題の宝庫です。以前に、ネットショッピングのタスクをしたとき、被験者3人とも、本人たちは目的の商品を買えたと思ったのに1人分の商品は届いたがあとの2人の商品は届かなかったことがあります。注文できたときの確認画面と注文に失敗したときの確認画面がはっきりとした差がなく、被験者は失敗したときの画面を見て購入成功と勘違いしたのです。このケースは実際にはまだゴールに到達していないのに被験者がゴールだと勘違いした例です。
その反対のケースもよく発生します。ネットショッピングで言えば、正常に購入成功したのに、よろしければユーザー登録してくださいなど、一見まだタスクが続いているかのような誘いに惑わされ、経験の浅い被験者が「あれ?まだ終わってなかったのかな?」と迷い続けたりします。

皆さんはタスクのゴールをどのように設定していますか?タスクを達成したのか達成してはいないのか、判断基準を文章で記述していますか?タスク達成の判断をしますからゴールは必ず設定します。タスク達成を判断せず、問題発見だけを目的とするテストであっても、ゴールを設定しないと、そのとき、そのときの判断でタスクを終わらせてしまいがちです。そうすると問題を見逃す可能性が出てきます。ユーザビリティテストのたびに、これでいいのか迷いながら実施している方、経験の少ない方であればあるほどルールや設定を明確にしてユーザビリティテスト結果の品質が低下しないようにしましょう。

被験者にとってのゴール
被験者の立場で言えば、ゴールは自分自身で「タスクが終わった。」と、内発的に実感できたときです。それは全く主観的で、同じ画面を見ても、終わったと感じる被験者もいれば、終わったとは思わない被験者もいます。ネットショッピングなら「目的の商品の注文が終わった。数日中に手元に届くから待てばよい。」と実感するのが被験者にとってのゴールです。
被験者がゴールを実感したかどうかは被験者の心の様子ですから観察するだけではわかりません。だから、タスクの終わりは、被験者自ら自発的に「終わりました」と声に出して言ってもらう必要があるわけです。皆さんがユーザビリティテストをするとき、タスクの終わり方はどんな風でしょうか。よくあるのは被験者が無言で何もしない状態が続くケースです。こういうケースの対応、皆さんはどうしていますか?これについては別のところで触れます。
 
システム上のゴール
被験者にとってのゴールは被験者自らが感じる主観的な判断でしたが、テストする側にとってのシステム上のゴールはできる限り客観的な判断を求められます。そのときの被験者の行動と評価対象である製品側の反応、この一対の客観的事実によって誰が判断してもタスクが達成したと思える状態をゴールとします。

認知的なタスクの場合
メールアプリ、新規メールアドレス登録のタスクで考えてみましょう。ゴールの候補としては次の場合が考えられます。
A 相手先の名前とメールアドレスを正しく入力出来た段階
B 相手先の登録が完了しました とメッセージが表示された段階
C アドレス帳を開いて登録された相手先を確認できた段階
この場合は、A を選んでよくないことはありませんが、B またはC をゴールとして設定します。どちらも誰が観察しても客観的事実として迷うことなく判断出来ます。但し、C を選んだ場合は、登録が正しく出来たかどうかの確認までするようにタスク指示する必要があります。

物理的タスクの場合
部屋の窓を開ける、と言うような物理的タスクではどうでしょう。少しでも開けば、開きましたと感じる人もいます。窓が半分ぐらい開くと開きましたと感じる人もいます。窓が全部開き切ってはじめて 開きましたと言う人もいます。このケース、ゴールをどのように設定すればいいでしょうか? 一般的にこのようなケースでは、窓を全開した状態をゴールに設定します。理由は単純です。仮に窓の開けはじめや、中央付近にやりにくさが隠れていた場合でも発見することができるからです。中央付近まで開いた状態をゴールに設定していたら、最後の全開にする段階にやりにくさがあった場合、問題を見逃すことになりかねません。

作成型タスクの場合
タスクの結果として何か形あるモノができる、そういうタスクの場合です。例えば、デジタルカメラで写真撮影のタスク、室内に高さ20㎝ぐらいの2体の人形が置いてある。右側の人形は被験者から1メートルの位置にあり、左側の人形は被験者から1.5メートルの位置にある。右側の人形にピントが合い、左側の人形はぼやけた写真を撮る。このような作成型タスクのゴールはどのように設定すればいいでしょうか。皆さんならどう設定しますか?
例えば、このように設定します。2体の人形はそれぞれ全身が撮れていること。右側の人形にピントが合い、左側の人形にはピントが合っていないこと。手振れがないこと。極端な明る過ぎ、暗過ぎがないこと。このくらいが決まっていれば誰でも判断出来ます。また、条件を満たした写真を事前にプリントして作っておき、ゴールとして被験者に示すことも有効です。
しかし、カメラは被験者が持っていますから進行係からは画面はか見えません。皆さんならどうやって確認しますか? 考えてください。
A 本人に言葉で質問しゴールの条件に合っているかどうか答えてもらう。
B テスト終了後、次の被験者のテストが始まる前にカメラを見て進行係が確認する。
C テストが終わってから写真画像をパソコンに取り込み、表示させて確認する。
D その他

タスクの達成とは
ところで、タスクの達成とはどういうことでしょうか?皆さんがユーザビリティテストをやっていて、今、終わったばかりのタスクが達成したか、達成しなかったか? は、どのように判断していますか?
次のA B C の場合、皆さんならどう対応し判断しますか?
A システム上のゴールに達したが、被験者は何やら続けたい様子である。
B システム上のゴールに達したが、被験者は何も操作はせず、画面を見ている。
C システム上のゴールに達し、被験者は終わったと言う。
D システム上のゴールに達していないが、被験者が終わったと言う。

被験者にとってのゴールとシステム上のゴールが、同時に生じたときがタスクの達成です。
タスクの達成、つまり被験者はタスクが出来たのか、出来なかったのかの判断は、操作の結果としてシステム上のゴールに達したとの事実だけでは十分ではありません。同時に、被験者自らが「終わった」と実感する必要があります。あなたは、被験者が「終わった」と実感したことをどのように確認していますか?

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プロフィール

HN:
小畑 貢
性別:
男性
職業:
ユーザビリティ・コンサルタント
自己紹介:
株式会社ヒューマンインタフェースの代表取締役 小畑 貢です。

弊社はユーザビリティ評価及び関連サービスを提供しています。
市販の商品や開発途中の試作品(ソフトウェア含む)を対象に、一般ユーザーが使用する様子を観察、分析し、ユーザーがどの程度使うことができるか、何を改良するべきかを提案します。

弊社ホームページもご覧ください。
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